すまいづくりストーリー「京都市上京区で間口2.7メートルの住宅をリノベーションする」

現在お住まいの住宅や、相続などで引き継いだ住宅を快適にリノベーションして暮らしたいとお考えの方は多いと思います。しかし、今の状況からどのくらい変えることができるのか?あるいは、安全性や暑さ寒さに対する快適さは、どのくらい改善されるのか?など、不安が先立ちなかなか動き出せない方も、結構おられるのではと想像します。
そのような方に向けて、今回のコラムは当社が実際に手掛けた住宅のリノベーション事例を家づくりストーリー的にご紹介することにより、「ここまで変えることができる!」を実感していただければと考えています。
排水管の移設からはじまったリノベーション
今回の建築主からご連絡をいただいたのは令和5年11月、当社ホームページの「お問い合わせ」からでした。隣接した土地の建物が解体された際に、A邸の排水管が隣地の地中を通っていることが判明。隣地を販売する不動産会社から排水管を移設して欲しいと言われたため、当社へご相談をいただきました。
さっそくお宅にうかがうと、間口が2.7メートルで奥行きが9メートルの東西に長い建物。その最も奥(西側)に水まわりがあったのですが、排水管を敷地内、つまり建物の下にもってくるには、水まわりを道路に近い玄関寄り(東側)に移設する必要がありました。そのようなことから、工事は単に排水管の移設にとどまらない可能性が大きくなりました。

【写真】リノベーション以前の外観
「この地で暮らしたい」という希望を叶えるために
ご相談をいただいた時、このお宅は一時的に空き家となっていました。
そのようなことから、隣地を購入した不動産会社からA邸も「一緒に売却しませんか」との提案があったのですが、この家、そして上京区のこの地に愛着が強く、売却はせずリノベーションをして再びこの家で暮らそうということになりました。
7.5坪の1階をどうプランするか?
ここからフルリノベーションの計画がスタートしました。プランとしては、これまで隣の敷地内を通っていた排水管を自邸の敷地内に収め、かつ下水道までの距離を短くして工事費用を抑えるため、1階の道路に面した東側に水まわりをまとめました。逆に、これまで水まわりがあった西側は寝室スペースにして、その手前にリビングとダイニングキッチンを配置する計画にしました。
しかし、1階の広さはおよそ7.5坪。(約24.7㎡)、一人暮らし向けマンションの一室ほどの広さです。その中に居室、キッチン、浴室、洗面、トイレ、洗濯室をどうレイアウトするかは悩みどころでした。結果として、トイレと脱衣所兼洗濯機置き場を仕切らずに広めの空間とし、洗面台は廊下に置くことになりました。

一方、2階は比較的ゆとりがあり、およそ7.4畳の居室と廊下に面してウォーク・イン・クローゼットのように使える大きめの収納を設けました。居室の窓は出窓にすることにより、広がり感が出るように工夫をしました。

快適な暮らしには明るさも必要
京都市の都市部の住宅づくりでは建物が密集しているため、自然光の明るさをどこから取り込むかが課題になります。最も採光に適した南側は将来的に建物ができる可能性が高いため、窓を設けることができません。そこで、今後も塞がる心配のない東と西の開口部を大きくして、明るさを取り込むことにしました。
なお、東西の窓には日射遮蔽型の窓ガラスを採用することで、春と秋、日射によって室温が過度に上昇することを押さえます。
また、2階の西面から取得した光が階段室を通ってキッチンへ届くようにもなっています。

【写真】階段室からの採光
屋根を軽量化して耐震性を強化
京都の古い家の多くは地震に対する強さが不足していることがほとんどです。A邸もその例に漏れず、壁を撤去して基礎と柱・梁だけにすると思っていた以上に柱が細く、また梁も不足していることが判明しました。そこで、柱には筋交いを追加、また梁も追加することで躯体の強度を上げることにしました。さらに、建物の倒壊の要因となる重い瓦屋根からガルバリウム鋼板へ交換し、屋根の軽量化を図りました。
断熱性能も改修
この家が建てられたのは昭和40年代。当時は住宅の断熱について考慮される事はほとんどありませんでした。実際にA邸の壁を剥がしてしてみると、薄いグラスウールの断熱材が入っているのみでした。
そこで、部屋全体を断熱材でくるむよう壁と天井には高性能グラスウール、床にはネオマフォーム(フェノール樹脂フォーム)を新たに追加。さらに、熱が最も出入りしやすい窓は、樹脂フレーム+複層ガラスの高性能サッシに交換。特に、面積の広い1階西側の掃き出し窓と、2階の出窓はより高性能な樹脂フレーム+三層ガラスのサッシを採用しました。

【写真】床の断熱

【写真】壁の断熱
なお、窓の交換に際しては環境省の補助金「先進的窓リノベ事業」を、断熱や節水については国土交通省の補助金「子育てエコホーム支援事業」をそれぞれ活用しました。
コミュニケーションをDX化することで円滑に
当社では、お客様とのコミュニケーションを円滑にし、工事の進捗状況や完成イメージを確認しやすくするため、工程のデジタル技術化(DX化)を進めています。今回のリノベーションにおいても、進捗状況を360度撮影できるカメラで撮った写真をお客様と共有しました。
「360度撮影カメラ」で撮影し、建築主と共有した写真
また、完成イメージについても、実際に建物内を歩き回るようにしながら確認ができる高画質CG「ウォーク・イン・ホーム」をお客様とお互いに見ながら打ち合わせを進めました。
高画質CG「ウォーク・イン・ホーム」による完成イメージ
実際の完成写真
これまで、新築やリノベーションの打ち合わせは、図面や静止画パースを使っての説明が主でしたが、時としてお客様にはわかりづらいこともありました。その点、DX化によりお客様の理解度と安心感は格段に向上できたかと思っています。
完成して
当初は排水管の移設だった計画が、最終的には内装をガラリと変更するフルリノベーションとなりました。間口が2.7メートル、1階と2階を合わせて13.3坪という限られたスペースで、A様とお母様のお二人が窮屈さを感じずに暮らせる空間をどのように創り出すかは難題でしたが、A様にもお母様にもご満足いただけるすまいづくりができたことは、うれしく感じています。
最後に、A様から今回のリノベーションに関してGoogleマップに投稿いただきましたコメントをご紹介します。
「今年、築40年以上の家のリフォームを行いました。水回り関係は全て新しくしました。対応よくして頂きました。また推奨してもらった無垢材のフローリングは、一般の床材と比べると、感触、インテリアの雰囲気がやわらかい感じで大変気に入っています。」


今回の事例のように、間口が狭く奥行きのある狭小な住宅でも耐震・断熱改修を併せたリノベーションは可能です。現在お住まいの家が「地震が心配」「夏は暑くて、冬は寒い」「使い勝手が良くない」などお悩みの方は、お気軽に当社へご相談ください。