BLOG

知っておきたい木造住宅の劣化対策

日本の住宅の寿命は短い?

現代の木造住宅は寿命が短いと言われますが、はたして本当にそうでしょうか? 答えとしては、半分は正しく、半分は間違っているといえるでしょう。

しっかり作って、ていねいに使い、不具合があれば適切なメンテナンスを行えば、木造であっても100年を超えて使い続けることも可能です。逆に、日本の気候は夏は高温多湿で冬は低温乾燥、それらを考慮した建て方でなかったり、建築後の定期的な点検を怠ったりすると、建物の隠れた部分から木材の劣化が進行し、早々に建物の寿命を迎えてしまうことになります。

つまり、劣化対策をしっかり考えられた住宅の寿命は、決して短くはないといえるのです。

長期優良住宅で求められる劣化対策

さて、すまいづくりを考えておられる方であれば、「長期優良住宅」という言葉を耳にされたことがあるかと思います。

長期優良住宅は、その名のとおり、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅」のことです。2009年に施行された法律で定められた制度で、認定を取得することで建物の耐震性、省エネルギー性、耐久性、維持管理容易性などが保証される他にも、住宅ローンや税制優遇、地震保険料の割引などを受けることができます。

この中の「耐久性」に関わる部分が劣化対策であり、長期にわたり良好な状態を維持するための要件です。木造住宅で長期優良住宅認定を受けるためには、以下3点の劣化対策が必要になります。

  1. 劣化対策等級3相当
  2. 床下及び小屋裏の点検口を設置すること
  3. 床下空間に330mm以上の有効高さを確保すること

上記の項目のうち2. と3. は、床下や小屋裏の点検を可能かつ容易にするための基準です。では、1. の劣化対策等級3相当とはどのような基準なのでしょうか? もう少し詳しくみてみましょう。

劣化対策等級3とは

等級3の内容を知る前に、劣化対策の等級について触れましょう。等級は3ランクに分けられ、等級3が最も優れた等級です。具体的には以下の通りです。

等級1:建築基準法で定める通りの対策が講じられているもの

等級2:通常想定される条件のもと、2世代(50〜60年)まで大規模な改修工事をせずに使えるように対策されているもの

等級3:通常想定される条件のもと、3世代(75〜90年)まで大規模な改修工事をせずに使えるように対策されているもの

さらに、等級3を取得するためには、木造の場合、以下の基準について一定の要件を満たすことが必要です。

  1. 外壁の軸組における防腐・防蟻措置
  2. 土台の防腐・防蟻措置
  3. 浴室と脱衣室の防水措置
  4. 地盤の防蟻措置
  5. 基礎の高さの確保
  6. 床下の防湿・換気措置
  7. 小屋裏の換気措置
  8. 構造部材等の基準法施行令規定への適合

木造住宅の敵は「水」と「湿気」、そして「シロアリ」

上記の8項目をみて分かるとおり、劣化対策とは雨漏りなどによる「水」、地面から上がってきたり、生活の中で発生する「湿気」、そしてどこからかやってくる「シロアリ」による木材の劣化を防ぐことに尽きると言えます。

水による木材の劣化(「腐朽」と呼ばれます)が多いのが浴室や台所といった水まわりです。また、通気や換気がしにくく、地面の水分の蒸発により湿度が高くなりやすい床下も発生しやすい場所の一つです。さらに、雨漏りした屋根裏、ひび割れや配管の老朽化で水漏れが起きた場所、雨どいや結露しやすい場所などの周辺にある木材も腐朽するリスクが高いといえます。

腐朽は、「木材腐朽菌」という微生物によって引き起こされます。木材腐朽菌は繁殖する際に適度な水分を必要とするため、湿度が高い場所の木材に発生します。名前のとおり、木材の主成分を栄養源にして分解し、木材の強度を低下させます。なお、カビも同様に木材を腐らせると思われがちですが、カビは木材の表面にだけ繁殖し、内部に影響を与えて木材を劣化させることはほとんどありません。

腐朽を防ぐためには湿度の管理が重要

木材腐朽菌が発生し、繁殖するためには、栄養(木材)・温度・水分・空気の4つの条件がそろう必要があります。逆にひとつでも条件を欠くと、木材腐朽菌は活性化しません。つまり、木材を乾燥した状態で保っていれば、腐朽を防ぐことができます。

そのためには、床下などの湿気がこもる場所を換気する仕組みを建築時に組み込み、常に乾燥した状態に保つことが大切です。また、隠れている配管や屋根裏などに水漏れがないかを、定期的に建築のプロの目で点検を行います。そして、不具合が発見された場合は、早期に対応を行なうことで、寿命が短いと思われがちな木造住宅であっても100年を超えて使い続けることも可能なのです。

さて、劣化対策における「水」「湿気」と並ぶターゲットが「シロアリ」です。これについては次回のブログで紹介させていただきます。

「シロアリ」についてのブログはこちら
https://arch-koba.com/2022/03/05/blog202203052/(新しいタブで開く)

関連記事一覧

最近の記事