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「高気密高断熱住宅はカビが生えやすい」はホント?

あっという間に6月、今年も梅雨の季節がやってきます。日本気象協会の「梅雨入り予想」によると、今年は全国的に平年並みか早い予想で、近畿では6月上旬頃が梅雨入りとなるようです。梅雨と聞くとジメジメとした天気によるカビの発生など、不快なイメージと結びつくため、多くの方にとっては憂鬱な季節ではないでしょうか。

さて、その「住宅のカビ」が今回のテーマです。カビの発生について「高気密高断熱住宅は室内が一年中暖かく、湿気がこもりやすいためカビが生えやすいのではないか?」というお客さまからの質問をときどきお聞きします。今回のブログでは、そのような疑問にお答えするために、高気密高断熱住宅とカビとの関係についてご説明したいと思います。

カビが生える3つの条件

まずカビの生える条件について整理しましょう。大きく3つあります。

  • 温度

0℃~40℃で繁殖しますが、最適といわれているのは25℃前後です。昨年の京都市の梅雨時の平均外気温は24.4℃、一昨年は23.9℃でしたから、梅雨の時期はカビが繁殖しやすい気温といえます。

  • 湿度

湿度80%以上で活発に繁殖し、湿度60%以下になるとその勢いは弱まります。乾燥状態を好むといわれる一部のカビでも、繁殖には65%の湿度が必要です。

  • 栄養

カビは食品や髪の毛、ホコリや石鹸カスまでも栄養にしていまいます。そのため、付着した水分や汚れをふき取り、こまめに掃除をすることがカビ対策には不可欠です。

高気密高断熱住宅はカビが生えやすいのか?

さて、「高気密高断熱な家はカビが生えやすいのでは?」とおっしゃられる方の多くは、インターネットの記事などをご覧になられたのがきっかけのようです。それらの記事で主張されている「高気密高断熱な家にカビが生えやすい理由」を要約すると次のようになります。

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高気密住宅は、いわば密閉容器のようなもの。室内の湿気がこもり、これがカビの発生しやすい湿度につながる。さらに、高断熱仕様だと、一年を通してカビの生育に適した温度となる。これらにより、高気密高断熱住宅はカビが生えやすい。

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もっともらしい理屈ですが、間違った認識だと言わざるを得ません。確かに、気密性が高いと、隙間風などが侵入してくることはありません。しかし、24時間換気システムを稼働させることによって、室内の湿気は効率よく排出され、カビの発生しにくい環境になります。設計時にしっかりと換気計画がなされていれば室内に湿気がこもることは無いのです。

また、カビの発生の大きな原因となるのが、窓や壁に発生する「結露」ですが、高気密高断熱の住宅では外気温を室内まで伝えないため、結露が発生しにくい状態です。更に室内の水蒸気は、留まることなるく、排気とともに外へ排出されます。

逆に、隙間が多い低気密の住宅では、たとえ24時間換気システムが稼働していても、室内の汚れた空気をいつまで経っても排出することができません。針で何ヶ所か穴を開けたストローでコップの水を飲んでみてください。すき間から入ってくる空気のせいで、コップの水をうまく吸えないと思います。これと同じ原理で、隙間の多い家は、いくら換気システムを稼働させても、家の中の空気が入れ替わらないのです。

そのようにして、室内にいつまでも留まっている汚れて湿った空気は、結露やニオイとなり、やがてカビの発生原因となります。つまり、「気密性能の低い家こそ、カビが生えやすい家」と言えます。

では一体なぜ、「高気密高断熱の家はカビが生えやすい」といった誤った情報が流布されるのでしょうか? その理由のひとつに、技術的な制約から高気密高断熱化できない住宅があるからです。そのような住宅を作る人にとって、お客様すべてが高気密高断熱化を求めるようになっては困るからかもしれません。

さらに、「高気密住宅は息苦しい」といった疑問を持たざるを得ない記事もネット上で見かけることがあります。これについても、上記と同様の理由からだと推測できます。よく考えてみてください。みなさんが移動手段として利用される飛行機や新幹線は、住宅以上に高気密な空間です。それらに乗っていて息苦しいと感じる方は、はたしてどのくらいいらっしゃるでしょうか。

「インターネット上の記事が全部正しい訳ではない」は、住宅関連の記事でも言えることなのです。

高気密高断熱住宅のカビ防止で注意すること

ここまで述べてきたことを整理しまししょう。梅雨時に発生のリスクが高まるカビも、高気密住宅+24時間換気により防ぐことができます。ただし、そのためには、いくつか注意しなければならいことがあります。

①換気システムは止めない

現在は住宅への設置が義務付けられている24時間換気システムを、電気代がもったいない、あるいは湿気や花粉が入ってくるなどの理由で止めてしまう方がいらっしゃいます。これでは、計画された換気が行われず、室内の空気が滞留してしまい、それこそカビの原因となってしまいます。

まず、電気代についてですが、換気扇を24時間連続で稼働させても、消費する電気代は月額で数十円〜150円程度です。この金額と引き換えにカビのリスクを抱えるのは、合理的とはいえません。また、花粉の侵入についても、現在の給気口にはフィルターが取り付けてあるため、ホコリや花粉はブロックされます。ただし湿気については、湿度交換機能の付いていない換気システムもあるので、その場合は除湿器やエアコンの除湿機能を併用することをおすすめします。

なお、高気密高断熱住宅の中でも特に気密性能の高い住宅では、換気効率が良いことからホコリがそもそも溜まりにくくなっています。そのためにも24時間換気システムの定期的なフィルターのお手入れが不可欠となります。

②空気の流れを作る

室内を空気が流れやすい環境にすることもカビの防止には効果的です。収納に入れるものを8割程度に抑えたり、壁と家具の距離を離すなどして空気の通り道をつくり、湿気が溜まり難くする工夫が必要です。

③こまめな掃除

ホコリ1g中には、なんと数万~数十万個ものカビが含まれているというデータもあります。これが、カビの栄養となるものに付着することで、カビが発生します。木造住宅の主要材料である木材もカビの大好物です。

そのため、ホコリや汚れを溜めないことが一番の対策になります。アルコールなどで拭き掃除をするだけでも対策になる場合もあるので、ぜひお試しください。

高気密高断熱住宅は信頼できる住宅会社で建てる

これからの住宅にとって、高気密高断熱は必須です。断熱性能は設計時の仕様(どんな断熱材をどのくらいの厚さで施工するか)で決めることができます。一方で、気密性能は、設計で決めることができず、施工技術の良し悪しに関わってくる部分が多いといえます。

そのため、建築途中と完成時に「気密検査」という気密性能の実測を行い、計画している気密性能に達しているかを確認します。気密検査は、法律で決められたものではなく、住宅会社が自主的に行なっているものです。当社では、新築の場合は全棟気密検査を行っています。

※気密検査の様子については、こちらの記事をご覧ください。
気密測定により住宅の性能を確認する | 京都市の木造注文住宅・リフォーム・不動産 | 創業元治元年 小林工務店 (arch-koba.com)

ですから、高気密高断熱住宅を建てたいと思ったら、住宅会社に「気密検査は行っていますか?」と訊いてみるのが良いかもしれません。また、24時間換気システムの給気口の配置や、メンテナンスのし易さに対する配慮についても質問をしてみましょう。

以上のように、住宅の気密性能が低いと、住宅内の結露やカビに一生悩まされることになります。そのため、高気密高断熱住宅づくりは、経験豊富で技術力のある、信頼できる住宅会社に頼むのが安心と言えます。梅雨時にもカビの心配のない暮らしをお望みであれば、ぜひ高気密高断熱住宅をご検討ください。

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