気密性能の良し悪しは、施工者の理解度が左右する
気密工法の実際
住宅の気密性能の大切さは、別のブログ「気密測定により住宅の性能を確認する」でご紹介しました。今回は、その気密性能を高めるための工事についてご紹介します。
「隙間を無くせば気密性能はアップする」と、理屈では簡単なのですが、なにぶん住宅は大きなもの。その中で見えるか見えないかの隙間を無くしていくのは想像以上に地味で困難な作業です。またその作業は、職人の手仕事によるところが大きく、各々の仕事の丁寧さに、計画どおりの気密性能が発揮できるかどうかがかかってきます。
気密工法は各社様々
気密工法は大きく分けて「シート気密」と「ボード気密」があります。シート気密とは、壁の室内側にポリエチレン製の防湿気密シートを連続して施工し、家全体を隙間なく包んでしまう工法です。
防湿気密シートは入手しやすいのがメリットですが、施工の難易度が高いのが難点です。隙間があると、そこから空気が出入りしてしまいます。梁が貫通した部分やコンセント、スイッチ類の配線まわりなどもしっかり防湿気密シートを加工しなければなりません。この加工が難しく、施工者の技術によって気密性能に差が生じてしまいます。
この手間を軽減させたのがボード気密です。外壁に用いる構造用面材と柱の間に気密パッキンをはさみ、面材自体が空気を通さない構造用合板(ボード)を用いることで、気密施工を容易に、かつ精度を高めることができます。先日気密検査を行った南丹市の現場はボード気密に分類されます。
これまでの住宅は隙間だらけ
木造住宅の建築は、鉄筋コンクリート造のように型に流し込んだ一体整形ではなく、木材を中心とした各部材を組み上げていく作り方のため、「隙間」はあらゆるところに生じます。気密性能を高めるためには、これらを全て潰していくことが必要となってきます。
気密工事のいくつかを紹介しましょう。
基礎と土台の間には「基礎パッキン」
かつての住宅建築においては基礎は住宅の外部と考え、建物の断熱は床面に貼った断熱材によるものが主でした。これを「床断熱工法」と呼びます。
一方、高気密高断熱な住宅が普及するにつれ、コンクリート製の基礎も建物内の一部と考え、室内と同様に基礎内も高気密高断熱にする工法が、寒い地方を中心に広まってきました。こちらは「基礎断熱工法」です。
基礎はコンクリート製、その上に乗る土台は木。どうしても隙間が生じます。そのため、基礎と土台の間には樹脂製の気密パッキンを挟み込み、外気が基礎内に侵入することを防ぐことで、基礎の気密性能を高めます。
「床下エアコン」や「全館空調」を行う住宅は「基礎断熱」が基本です。小林工務店の家もこれに準じています。
屋根の断熱は特に気をつけて
室内で温められた空気は上昇します。もし、屋根の気密性能が悪いと、暖かい空気は屋根の隙間から逃げ出してしまいます。また、屋根裏は工事をしていても目視しづらく、高さがあり手が届きにくいため、施工性も落ちます。これらの理由から、屋根は気密性を高める上で特に気をつけて施工する部分です。
基本的に、屋根を支える垂木と断熱材の取り合いにはすべて気密パッキンを入れることで、空気の漏れを抑えます。さらに、屋根の下地となる野地板の継目に気密テープを貼る、垂木と桁の取り合いにコーキングを打つなどの一手間を加えることで、屋根の気密性をさらに高めます。
壁面も隙間なく
建物の表面積において多くを占める壁面もまんべんなく気密を保つ施工が必要です。柱とその外側に張る構造用合板のに制震テープや気密パッキンなどを貼り、内側に貼った断熱材と柱との間にウレタンフォームを充填します。また、壁面には配管や配線などのために多数の穴が開くことになります。これらの穴の隙間もすべて入念に気密処理を施します。
窓の取り付けにもパッキンを
壁面と、そこに開口部を設けて取り付ける窓との間も隙間が生じやすい部分です。
そのため、伸縮性と追従性のある気密パッキンや耐久性が高く粗面にもしっかり貼り付く気密防水テープを貼ることで、気密性を確保しています。
継手の隙間も埋める
継手部分をいくら精度高く加工したとしても隙間が生じてしまいます。ここも気密テープを巻くことで、気密性を確保します。
大切なのは現場の意識
このように、住宅の気密性能を高めるためには、きちんとした仕事が求められます。小林工務店では、工事に携わる全員の理解を深め、各部分でいかに気密を取るかを協議・確認し、工事が始まってからも監督と職人の間でその都度進め方の確認を行うため、C値が0.1台もしくはそれに近い値になる高気密住宅をつくることができるのです。
そして、私たちは工事に携わる一人ひとりが注意・確認し合いながら丁寧に進めることこそが最重要事項と考え、これからも高い気密性能を備えたすまいづくりを目指していきます。