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高気密・高断熱住宅に“木製サッシ”という選択肢。メリットとデメリットをチェック!

高気密・高断熱の住まいづくりを検討されたり事例をご覧になられたりした方においては、「木製サッシ」という言葉を目にしたことがあるのではないでしょうか。
木製サッシは、文字通りサッシの素材に木を使用した窓です。また、単に木製の建具と言うだけではなく、アルミサッシと同程度の気密性をもった断熱サッシのことをさします。
現在、高気密・高断熱住宅に採用されるサッシは樹脂製のものが主流となっており、木製サッシが採用されるケースは稀です。その理由は、木製サッシの商品ラインナップが少なく選択肢が限られることや価格面の課題が挙げられます。また、施主様においては、旧来の「木製建具」のイメージがどこかにあり、木製サッシの性能や耐久性に不安を感じていることも理由のひとつです。さらに、設計・施工をする工務店自体が木製サッシについて正しい知識を持ち合わせておらず、施主様にきちんとした説明ができていないのも、設置率が伸びない理由です。
しかし、木製サッシには自然素材ならではの質感があり、それは無機質的な樹脂サッシでは味わうことができない魅力です。

実は現在、当社で新築中の住宅は、HEAT20 G3グレード(断熱等性能等級7)の性能を確保しながら、LDKの大開口部には木製サッシを設置する設計となっています。そこには、木製サッシの持つ温もりのある質感を内装デザインに取り入れたいという意匠面でのこだわりとともに、木製サッシがHEAT20 G3グレードの住宅にも使うことができることを実証したいという意図もあります。
そこで今回は、高気密・高断熱住宅に木製サッシを取り付けることで、得られるメリットと気を付けたいデメリットについて、お伝えしたいと思います。
「木製サッシは気になるが、性能やメンテナンスは実際のところどうなの?」と気になっている方にぜひ読んでいただきたい記事です。

☞ 用語解説
窓は「サッシ」と「窓ガラス」から構成されています。その中でも、サッシは、窓を家に取り付ける役割を持つ「枠」とガラスを枠にはめ込むための「框(かまち)」で構成されています。
(YKK APホームページ「サッシとは?-窓の種類や材質ごとのメリット・デメリットなどを解説」より)

高断熱住宅は窓が命!

気密・高断熱住宅を建てるとき、窓はとても重要な要素の一つです。
当社の家づくりブログ『HEAT20G3グレードがこれからの小林工務店の標準仕様です』内でもお伝えしている通り、住まいの断熱性能を得るためには、「基礎(床下)/屋根/壁」の断熱性能の確保と合わせて、「窓」の断熱性能も高める必要があります。なぜなら、住宅において、熱の出入りが最も激しいのは開口部、いわゆる窓だからです。どんなに家の断熱性・気密性を高めたとしても、開口部の性能を上げない限りは、冷暖房の熱が外に逃げてしまうのです。
先ほどもお伝えしたように、現在、高断熱性能を謳うサッシの主流は樹脂製です。
一般社団法人日本サッシ協会が毎年行っている『住宅用建材使用状況調査』の結果によると、2022年8月~2023年9月の間に建てられた全国の戸建住宅の窓の割合は、「アルミ製サッシが66.7%、樹脂製サッシが33.2%」と、アルミ製のサッシが全体の2/3を占めていますが、樹脂サッシの割合は前年の調査結果28.5%から4.7ポイント上昇しており、その需要の高まりが数値にも表れています。(参照サイト:chousagaiyou2403.pdf
なぜ、高断熱サッシには樹脂が用いられているのかというと、樹脂の熱伝導率(熱の伝わりやすさを表したもの。数値が低いほど熱が伝わり難い)がアルミの約1/1400と低いからです。熱伝導率が低いため、夏の暑さや冬の寒さが伝わり難いため室内外の熱の出入りが少なく(冬場は結露が発生せず)、エアコンによる室温調整も経済的に行うことができます。また、加工がし易いのも利点です。(YKK AP『APW 樹脂窓シリーズ カタログ』より)
そのため、HEAT20 G3グレード(断熱等性能等級7)とする場合は、弊社でもその基準を満たす樹脂サッシ(例えばYKK AP/APWシリーズ)を採用しています。

木製サッシのメリット

ところが、上記の熱伝導率のグラフを改めて見て頂くと、実は“木”の方が、樹脂よりもさらに数値の低い素材であることが分かります。
木はもともと熱を伝えにくい性質を持っていて、その熱伝導率は樹脂の約60%程度。樹脂よりも断熱性能の優れた素材といえます。特に冬場、冷たい外気が室内に伝わりにくく、結露の防止に大きな効果を発揮し、暖かさを保ち易い素材といえます。
断熱性能だけではありません。他にも木製サッシには以下のようなメリットが挙げられます。

1. 自然の温かみと美しい見た目
まず、木製サッシの一番の魅力は、なんといってもその見た目と手触りでしょう。自然素材の木は、他の素材にはない独特の温かみが感じられ、さらに木の重厚感と経年美化を楽しむことができます。木製サッシを取り付けることで、部屋全体がほっこりとした雰囲気になります。

2.引張強度はアルミの約5倍
木はそのやさしい質感とひきかえに”弱い”というイメージを持たれがちですが、実際には同じ質量あたりで比較すると、木材はアルミに比べて非常に強い材料であることが実証されています。ただし、木は「曲がる」「くるう」「腐る」などの性質を持っていることも確かです。木製サッシは、木の持つこれらの性質を正確に理解し、これを技術的に克服し、利用した高精度の工業製品です。乾燥、塗装、加工、組立等の技術開発と品質管理により、高性能の木製サッシ製品を安定的に供給することが可能となっています。

各種材料の比強度
 異なった材料の引っ張り強さを比較した指標です。
 材料の強さを質量で割った値で、スギはアルミの約5倍であることを示しています。
一般社団法人 日本木製サッシ工業会HP「人にも環境にも優しい木製サッシ」より)

3. 環境に優しい選択肢
木材は再生可能な資源なので、環境にも優しい選択です。特に国産の木を使えば、地元の産業を応援することにもつながります。木材の利用が森林を破壊し地球環境の悪化を招いているという主張もありますが、適切な伐採と植林を前提とする、秩序ある木材の利用こそが地球環境を守る有効な手段です。
また、木製サッシは、その使用時における省エネルギー性能だけでなく、製造段階で放出される炭酸ガス量もきわめて小さく、地球温暖化などの問題を引き起こすことが少ない工業製品と言えます。また、廃棄の段階でダイオキシン等の有害物質を出すこともありません。 資源の育成から製造、消費、廃棄までの長期的な視野に立つとき、木製サッシの利用は地球環境保護の貢献にもつながるものと考えられます。

アルミサッシと木製サッシの製造エネルギー及び炭素放出量比較
 1m2あたりの窓枠サッシについて、アルミ製と木製のサッシ製造にかかるエネルギーと炭素放出量を比較したものです。 窓を製造するのに、アルミサッシは木製サッシの約135倍の熱量を使い、それだけ炭酸ガスの発生に関与することを示しています。 また、炭素放出量についても、材の場合は炭素が固定・貯蔵されていることにより、その放出量には大きな差が生じています。
一般社団法人 日本木製サッシ工業会HP「人にも環境にも優しい木製サッシ」より)

木製サッシのデメリット

では、木製サッシのデメリットにはどのようなことが挙げられるでしょうか。

1. 定期的なメンテナンスが必要
木製サッシの最大のデメリットは、手入れが必要なこと。
木は湿気や紫外線の影響を受けやすく、長期間使用すると反りや割れが生じることがあります。そのため、サッシの外側に木を使う場合、特に定期的な塗装や防腐処理が欠かせません。塗装面が傷んだまま放っておくと、後々のメンテナンスコストが高くなってしまう場合もあるので、定期的な点検が必要です。(一般的には3~5年に一度再塗装することが推奨されています。)
また、外側の木部を樹脂やアルミで被覆して耐久性を高めることで、メンテナンス性を向上させている木製サッシも販売されています。

2. コストがやや高め
アルミや樹脂のサッシに比べ、木製サッシはコストが少し高くなる傾向にあります。
一般的なコストの目安としては「アルミサッシ < 樹脂サッシ ≦ 木製サッシ」となっており、素材によっても窓の開き方によっても異なりますが、140×170cm程度の引き違い窓を例にすると、相場はおおよそ次のようになります。
・アルミサッシ:約3〜5万円
・樹脂サッシ(ペアガラス使用):約9〜18万円
・木製サッシ(ペアガラス使用):約6〜30万円
(参照サイト:美しい窓のある暮らし/木製サッシ|価格・相場より
特に高品質の木材を選ぶと初期費用が更にかかってきますので、その点は頭に入れておく必要があります。

3. 防火性能に注意
防火性能は、アルミや樹脂に比べると少し劣ることがあります。
実際には、長時間火を加えた場合、木はアルミよりも燃え尽きるのが遅い素材なのですが、今の日本の法律では、防火地域・準防火地域では「防火認定を受けていない木製サッシ」は使用できません。
しかし、防火認定を取得している木製サッシも販売されていますので、木製サッシを取り付ける際は、防火性能も考慮して、地域の建築基準に合った選択をすることが大切です。

 

木製サッシという選択肢

いかがでしたでしょうか。
木製サッシにはメンテナンスの手間や価格面での課題はありますが、その美しさや断熱性能は捨てがたい魅力といえます。
現在、国内外のメーカーを合わせて日本で購入できる木製サッシは実は多数あります。それぞれに性能やデザイン、メンテナンス性などに特徴がありますので、「木の温かみをわが家の窓にも取り入れたい!」という方は、これを機会に木製サッシの設置を検討してみてはいかがでしょうか。(ちなみに、冒頭でお伝えした新築中の住宅では「スマートウィン佐藤の窓」という木製サッシを取り付け予定です。その特徴や実際の設置の様子などはまた改めて紹介させていただきますのでお楽しみに。)

「わが家に木製サッシは付けられるの?」「どのメーカーのサッシがいいんだろう?」とお悩みの方は是非当社にご相談ください。当社はパッシブハウスジャパンにも加入しており、高性能住宅のスペシャリストとしての視点から、お住まいの状況やご予算に応じた様々な提案をさせていただきます。
もちろん、設置後のメンテナンスがご心配な方は、当社でアフターメンテナンスも対応させていただきますのでご安心を!
みなさんのお家づくりが、少しでも楽しくなるヒントになれば嬉しいです!

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