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配偶者や子・孫の名義で貯めていた預金にも相続税が掛かる⁉「名義預金」とは。

「良かれと思ってやったことが、税務調査に照らし合わせたらアウトだった!?」これは相続の中でよくあることです。今回はそのような「あるある」の一つ、「名義預金の注意点」についてご紹介したいと思います。

「名義預金」とは

このブログをお読みいただいている方の中にも、“最後は少しでも何か遺してあげたい”というお気持ちから、配偶者様やお子様・お孫様名義の銀行口座に預金されている方もいらっしゃると思います。また、年末年始をご親族とお過ごしになり、そのような思いを強くされた方も多いのではないでしょうか。

実はこの預金、適切な対策をしていないと、ご自身が亡くなった際に「名義預金」と判断され、相続財産として相続税の課税対象となってしまう可能性が非常に高いことをご存知でしょうか。配偶者や子・孫の名義の預金なのに、どうして亡くなった方名義の財産として課税対象となってしまうのでしょうか。それを避けるためには何に注意すべきなのでしょうか。

名義預金とは、平たく言うと「口座名義人のお金でないものを管理している預金」のこと。相続が発生したときに、亡くなった方(=被相続人)の名義でない預金であっても、実際の資金源や管理していたのは亡くなった方であると判断されると、それは名義預金として相続財産=相続税の対象となってしまいます。せっかく子供や孫のために良かれと思ってしたことが無意味になってしまう…そのようなことにならないためにも、名義預金と判定されないようにするにはどうしたらいいのか知る必要があるのです。
では、どのような預金が名義預金に該当するのでしょうか。その判断基準として以下の項目がポイントに挙げられます。
 ①預金の資金源が被相続人かどうか(自己の名で取得したものかどうか )
 ②口座名義人がその預金口座の存在を知っていたかどうか
 ③その預金の管理・運用は誰が行っていたのか
 ④その預金は過去に贈与を受けたものかどうか。贈与契約が成立しているか。

具体例を挙げてみましょう。
名義預金でよくあるケースは「妻名義の預金」と「子・孫名義の預金」の2つです。

<ケース1:妻名義の預金とその判断基準>

例)専業主婦である妻は、被相続人である夫から生前に生活費として受け取ったお金を節約して、妻名義の口座にお金を貯めていました(いわゆる“へそくり”です)。頑張った甲斐があり、預金残高が1億円貯まりました。

判定のポイントに照らし合わせてみましょう。
 ①その預金の資金源は ➡被相続人の収入
 ②口座名義人がその預金口座の存在を知っていたか ➡“へそくり”なので当然知っている
 ③過去に贈与を受けていたか ➡配偶者の場合、贈与の成立が非常に難しい
 ④預金の管理・運用は誰か ➡配偶者が一括で管理することも多い為、配偶者に関しては管理・運用は重視されない
結果として、配偶者名義の預金ではあるものの、資金源が被相続人の夫であり、過去に贈与が成立していたとは言えない為、実質的に被相続人の夫の財産ということになります。
特に配偶者の場合、夫婦間において妻が夫の財産を管理することが世の中には多い為、妻が預金を管理・運用しているからと言って簡単に贈与の成立を認めてしまうと、簡単に相続税逃れが出来てしまいます。その為、配偶者の場合には贈与の成立が非常に難しくなっています。

<ケース2:子・孫名義の預金とその判断基準>

例)被相続人がお孫さんの為に、孫名義の口座を作り預金をしていました。しかし、お孫さんに通帳やキャッシュカード等を渡してしまうと無駄遣いしてしまうのではないか、浪費家になってしまうのではないかと心配だった為、お孫さんには知らせず被相続人自らが通帳・キャッシュカード、印鑑を保管していました。

こちらも判定のポイントに照らし合わせて考えてみましょう。
 ①その預金の資金源は ➡被相続人の収入
 ②口座名義人がその預金口座の存在を知っていたか ➡孫は知らない
 ③過去に贈与を受けていたか ➡孫は知らない為、贈与は成立していない
 ④預金の管理・運用は誰か ➡被相続人が通帳や印鑑、キャッシュカードを保管しており、管理・運用は被相続人である
結果として、この預金は、被相続人がお孫さんの名義を借りただけの、実態は被相続人のお金(相続財産)ということになります。

一般的には、財産の所有者=名義人と考えるため、相続税申告をする際に名義預金は非常に漏れやすい財産となります。相続税申告で漏れやすいということは、税務署も名義預金の有無に目を光らせているということです。配偶者や子・孫の名義の通帳なのに、一体いつ・どのタイミングで名義預金として判断されるのでしょうか…。
それは、相続税申告後に行われる税務調査です。

税務調査で名義預金が判明すると

この税務調査では、亡くなった人の名義の財産を調べるのは当然ですが、亡くなった人の親族名義の財産も調査します。税務署では、税務調査の際に金融機関側が10年間保管する口座情報を確認出来ますが、これは被相続人だけではなく相続人の口座も確認する事が可能です。その為、被相続人名義以外の口座も把握可能となり、名義預金の存在が分かってしまうのです。
さらに税務署は亡くなった人の過去の収入も把握しているため、収入に対する財産のおおよその見当をつけています。相続財産が見当をつけた財産より少ない場合には、計画的に贈与をしていたのではないか、意図的ではないにしても名義預金となっている口座がないか、税務署は細かく念入りに調査を行うでしょう。

税務調査は必ずしも実施されるわけではありませんが、税務調査が入ると、申告漏れや誤り等が指摘される割合は約8割ともいわれています。当然、申告漏れ等があった場合には修正申告を行い、相続税を納めなければなりませんし、加算税や延滞税を納める必要も出てきます。しかも、名義預金は漏れる金額が大きくなるケースが多く、漏れる金額が多くなるということは、本来払う必要のなかった重加算税又は過少申告加算税のペナルティや延滞税も必然的に多額になってしまいます。
ペナルティは、故意であるか過失であるかによっても違いますが、名義預金と判定された場合には、その預金分の相続税を追加で払うのはもちろん、以下のようなペナルティを受けることになってしまいます。

・「故意でない」と見なされた場合:過少申告加算税で追加の相続税の10%
・「故意である」と見なされた場合:重加算税で追加の相続税の35%(無申告は40%)
・延滞税で追加の相続税の約2.4%~(延滞した期間によって変動)

名義預金となると知らずにいた場合には、申告した財産が少なかったとして、修正申告や更生をした場合には、追加納付相続税の10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)の過少申告加算税が課せられます。 故意に名義預金を作っていたと判断された場合には、重加算税として追加納付相続税の35%(無申告の場合には40%)が課せられます。

また相続税の申告期限を過ぎて納税を行う場合には、延滞税として追加納付相続税に対して延滞税が課せられます。 延滞税は毎年変動しますが、2022年(令和4年)1月1日から2022年12月31日までの期間の場合、納付期限から2ヶ月以内であれば年2.4%です。同期間で2ヶ月を超えると、年8.7%を日数に応じて課せられます。

【参照】国税庁:「No.9205 延滞税について」 詳しくはこちら

また、「名義預金」が認定された場合は、改めてこの預金について遺産分割協議を行わなくてはなりませんので、せっかく家族の為に貯めてきていたものが、ご自身の想いとはと違う形で渡ってしまう危険性も出てきます。
このように、名義預金が漏れてしまうと、納税者にとっては大きな負担となってしまうのです。

名義預金にならないためには

では、名義預金として扱われない為にはどのようにすれば良いのでしょうか。
それは、「生前贈与」として財産を渡すという事です。
ただ、この生前贈与も贈与自体が無効とならないように、「贈与契約書」を作成したり、贈与するお金を「振込」で行ったり、贈与後にお金を貰った側が「管理可能な状態」にしておくことが重要です。
生前贈与の際には、下記の点に注意する必要があります。
 ・贈与契約書を作成する
 ・贈与は銀行振込で
 ・財産を貰った人が自由に使える環境にする

※贈与は、「当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」【民法549条】と規定されています。つまり、「あげる側」と「もらう側」の“双方の合意”が必要となる為、「もらう側」がそもそも贈与を受けたという認識が無ければ、贈与は成立しないので注意が必要です。

ご家族様への贈与で契約書を作ったり、銀行振込をしたりするのは違和感があるかもしれません。
しかし、せっかく贈与をしたつもりでも税務調査で指摘され、贈与が無効になってしまうと意味がありません。きちんと税務署に対し、これは贈与です!と言えるように事前準備が必要です。
既に配偶者や子・孫の為に口座開設をしてお金を積み立てている方は、「一度ご自身の口座にお金を戻し、改めてその貯めた金額を数年間で分けて改めて生前贈与する」ことも名義預金対策の一つです。配偶者様やお子様・お孫様の為を想ってコツコツと積み上げてきた通帳と一緒に、改めて生前贈与する事でご家族の絆が更に深まるのではないでしょうか。
このほか、預金として渡してしまうのは不安という事であれば、貯めてきた資金を原資として生命保険に加入する方法も考えられますし、結婚・子育て資金の一括贈与の際の非課税措置等もございます。どのような対応が望ましいか、今一度検討いただくことをお勧めいたします。(尚、生前贈与の基本的な知識については、三菱UFJ銀行のHPに解説が掲載されていますのでご参照ください。)

いかがでしたでしょうか。
今回は、名義預金についてお伝えいたしました。
 “最後は少しでも何か遺してあげたい”。そのお気持ちが、きちんと配偶者様やお子様、お孫様に届くように…。お心当たりのある方がいらっしゃいましたら、是非ご一緒に準備を進めて参りましょう。
相続の話をすることは決してネガティブなことではありません。
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