「確定測量」で土地の売買や相続時のトラブルを回避しましょう
「確定測量」という言葉を聞いてピンとくる方は少ないかと思います。私たちが知っている「測量」とは何が違うのか? また、確定測量によって確定する土地の「境界」について、今回のコラムではご紹介したいと思います。
先日も当社のお客様より、「お隣との間に設けられたブロック塀が壊れそうで危ないので、撤去したいのだけれど…」というご相談をいただきました。
早速現地を確認させていただいたところ、プレートや鋲といった境界を示すものがないことが判明しました。これでは、この塀がどちらの所有物かが分からず、仮にお隣のものであったり境界線上に設けられていたりすれば、勝手に取り壊すこともできません。まずは、敷地の境界線がどこなのかを明確にしなければ話が先に進みません。
幸い、境界を明示した資料がすぐに見つかり、お隣の方にも確認いただいた上で、スムーズに工事を進めることができたのですが、もしこの資料が無かったら… 境界を確定するのには、それなりの手間と時間、そして費用が発生するなど、大事になるところでした。
ではこのような資料が無かった場合、境界はどのようにして確認することができるのでしょうか。
「筆界」と「所有権界」
まず押さえておきたいのは、土地の境界には「筆界(ひっかい)」と「所有権界」の2種類があるということです。
「筆界」とは、土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線のことを指します。“公法上の境界”ですから、所有者同士の合意などによって変更することはできません。
一方の「所有権界」とは、隣人同士の話し合いや売買の際の決定事項等、登記されていない合意等に基づいた、所有権の範囲を画する“事実上の境界線”を指します。
例えば、下の図をご覧ください。
土地№1-1があり、前面道路以外の3方をブロック塀等の工作物で囲まれています。(白黒の縞模様で表している部分)
この土地の境界のうち、土地№1-6との境界に着目してみると、筆界はC-Dで結ばれた線にもかかわらず、工作物(=事実上の境界線)がその内側に設けられています。つまり、この部分は筆界と所有権界とにずれが生じている(格子模様の網掛け部分)ということになるのです。
筆界と所有権界とは一致することが多いですが,この事例のように一致しないこともあります。その場合は境界線に関するトラブルが発生し、土地の所有者同士が裁判などで争う…などといったことにもつながりかねませんので、土地の境界は明確にしておきましょう。
「現況測量」と「確定測量」
それでは、境界を確定するにはどうすればよいのでしょうか。
その手段の一つが“測量”です。
一口に測量と言ってもさまざまな測量がありますが、不動産取引に絡む代表的なものとして「現況測量」と「境界確定測量」(以下「確定測量」と言います)の2つが挙げられ、筆界を確定させるためには“確定測量”が必要となるのです。
- 「現況測量」:
ブロック塀や周辺の境界標・資料等に基づいて、対象土地のおおまかな寸法・面積・高さを測る測量のことを指します。 - 「確定測量」:
現地において関係権利者立会いの上、境界を確認し、境界点に境界杭を設置して、境界確認書の取り交わしや測量図等を作成し、境界を確定する測量のことを指します。
確定測量は、接している土地の所有者とすべて面談し、境界の位置を確定させる作業となるので、専門的な資格を持った測量士による測量が必要となります。そのため、基本的には「土地家屋調査士」に頼むことになります。
【土地家屋調査士】
(土地家屋調査士法 | e-Gov法令検索)
「不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もつて国民生活の安定と向上に資することを使命」(土地家屋調査士法/第一条)とし、他人の依頼を受けて、「不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量」事務を行うことを業とする。(土地家屋調査士法/第三条一項)
確定測量が必要になる時は?
それでは、どんな時に確定測量が必要になるのでしょうか?
具体的に見ていきましょう。
(1)土地の売買
以前は登記簿面積での売買もありましたが、最近は土地価格高騰の影響やトラブル防止の観点から境界確認書付きでの実測面積での売買がほとんどです。
購入者からすると、将来近隣とトラブルになりたくないですし、土地の面積が1坪違うだけで、何十万円も損をすることになりますので、正確な面積が不明な土地は、売りづらくなりますし、値引き交渉をされやすくなるのです。
確定測量は、必ず必要ではありませんが、確定測量をしていない土地は、売却しづらくなります。不動産の売却を考えている方は、少しでも高く売却するために、確定測量を行いましょう。
(2)土地の分筆
全ての境界について、隣接土地所有者との境界確認作業が必要となります。
(3)境界杭の復元
道路工事等で境界杭が無くなってしまった場合等、無くなった境界杭を復旧する際にも確定測量が必要です。関係する土地所有者全員の立会い確認をした上で、新しい境界杭を設置しないと境界紛争の基となりますので注意が必要です。
(4)土地の物納
申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに境界確認書、測量図、登記事項証明書などの必要書類を提出する必要があります。「現地」と「測量図」と「登記簿」を一致させることが、土地を物納する為の要件となるからです。
(5)寄付や払い下げ
土地の寄付(帰属)や、国(公)有地の払い下げをする場合にも確定測量が必要になります。
相続準備としての確定測量
これら確定測量が必要となる場面を踏まえると、相続の現場においても、確定測量を行っておくことをお勧めします。
なぜなら、もし、相続人複数で土地を分けることになったとしても、確定測量をしておけば分筆はスムーズにできますし、納税の為に売却をすることとなっても安心です。アパートを所有している場合、アパート敷地を測量する費用は条件によって(土地を取得するための測量以外や、土地の価値を高めるための測量以外の測量費)は、経費計上できますので、費用面での軽減も図れます。
以前のブログでもお伝えしたように、令和6年(2024年)4月1日から、相続登記の申請が義務化されます。(ブログ『相続した不動産の登記、お忘れでないですか?「相続登記の申請の義務化」が始まります。』を参照ください)
確定測量をする為には長い時間が必要となり、申告期限に間に合わないこともあります。世代交代により、確定が難しくなることもありますので、境界の場所、土地の歴史を知っている被相続人の方がお元気なうちに測量に着手することをお勧めします。
確定測量を頼むには?
いかがでしたでしょうか。
もしも境界が明確でない不動産を所有されている方がいらっしゃいましたら、今後の相続や売却を円滑に進めるためにも、ぜひ早めの確定測量をお勧めいたします。
しかし「確定測量をしたいけど、どこに頼めばいいかわからない…」と迷われる時は、いちど小林工務店にご相談ください。
当社は、財産管理の全国ネットワークである「株式会社 財産ドック」の「京都上京センター」としての機能も有しており、司法書士、税理士、弁護士との連携を図りながら、測量に限らず、相続全般にわたって、皆様からのご相談にワンストップでお応えすることが可能です!
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